まだまだ解明されていないことが多い認知症ですが、生活習慣を見直すことで予防につながるといわれています。認知症予防の五カ条を参考に、生き生きとした毎日を過ごしましょう!

一、運動

転倒を機に寝たきりになったり、認知症の症状が現れることも多いそう。転びにくい体をつくるためにも、筋力やバランス能力を鍛えましょう。また、ウオーキングなどの軽い運動は、脳を刺激し活性化してくれます。気分転換にもなるので、無理をしない範囲でチャレンジしてみて。

二、生きがいづくり

家に引きこもっていると、脳はもちろん全身の老化が始まります。1日1回は外出する、サークルに参加する、おしゃれに気を配るなど、趣味や生きがいづくりも、認知症予防には欠かせません。

三、食事

規則正しい食生活はもちろん、さまざまな栄養素をバランスよくとることが大切です。とくに、野菜や果物、魚などをたくさん食べる人は認知症になりにくいといわれています。

四、腹八分目

エネルギーの過剰摂取は糖尿病などの原因になり、少食は脳の栄養不足を招きます。ゆっくりよく噛んで腹八分目を心がけましょう。

五、生活習慣病

高血圧、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病は、脳卒中や脳梗塞を招くため、脳血管性認知症の直接的な原因になるのはもちろん、アルツハイマー型認知症の発症リスクを高めることにもなります。食生活はもちろん、喫煙やお酒の過剰摂取、だらだらとした生活などを見直して。

いつ終わるのかわからないのが認知症の介護です。本人や家族だけで対処するのではなく、公共や民間のサービスを上手に利用しましょう。そのためにも、まずは適切な介護認定を受けることが大切。介護保険サービスの基本を学んでいざという時に備えましょう。

認知症エッセイ

「ごはんを食べるということ」

「晩ごはん、まだよばれとらんが、あとどのくらいかかるかね?」

夜8時。いつものようにA代さんが部屋から杖をつきながら出てきて、そう言います。ここは、名古屋市内の高齢者専用の共同住宅。住人は4人で、うちA代さんを含めて3人が認知症の女性です。他のスタッフと交代で、週に一度は私もここで宿直をしています。

教科書どおりに「夕食、まだでしたか? お茶でもいかが」と、言い終わらないうちに「お茶はいらん!」ときっぱり。「お米をかしているところだから、まだ1時間はかかりますが、待ってもらえる?」(実際にそのとき、翌朝の朝食の準備をしていたのです)。「そうか、じゃあ部屋で寝て待ってるから、炊けたら起こしてちょうだい」とA代さんは自室にもどられました。そんな問答を2、3回繰り返してから眠りにつくのが最近の日課です。

その翌週のことです。夕食の片づけが終わって、そろそろみなさんが自室へ戻られる時間、またまたA代さんが「晩ごはんはまだか」と言いはじめました。ふだんは仲が悪くて口もきかないB子さんも「そうだ、食べていないねえ」と突然の結束。ふたりが「まったく、ここはどういうところだ。ごはんくらい食べさせてもらわんと」「家に帰る、こんなところにはおれん」と口ぐちに言いはじめると、普段はおとなしいC美さんまでもが「そういえば食べてないわねえ」と同調するではありませんか(ど、どうしよう、だって、だって、45分前に食べ終わったばっかりだし!)。

3人の不穏熟女を前にビビる私に、A代さんは、「あっ! 入れ歯がない、あんたワシの入れ歯をどこにやった?」とさらに追い打ちをかけます(30分前に自分ではずして磨いてたやん!)。

みなさん、お部屋に戻られそうにもなかったので、その夜は少し夜更かしをして、おしゃべりタイムを楽しむことになりました。

A代さんは岐阜の農家の生まれで、6人きょうだいだったそう。「おっかさんは、どんなに貧しくても、米だけは子どもに腹いっぱい食わせてくれた。やさしいおっかさんだった」そんな話をしてくれるときのA代さんは、おだやかなやさしい顔になります。

食糧の少ない時代に幼少期を送られたB子さんやC美さんにも、きっと同じような思い出があるのでしょう。「ごはんを食べる」ということはそれぞれの心の中で、大切なキーワードになっているのかもしれません。

文/橘はこべ
野鳥とワインを愛する名古屋市在住の介護福祉士。仕事のかたわら、利用者さんの生い立ちや思い出を聞き取り、文章にすることをライフワークにしています。